導入事例:フジセン技工株式会社のネジ締め工程の自動化

ロボットユーザー:フジセン技工株式会社 様

双腕スカラロボットduAroがネジ締めをする写真

半導体製造装置など産業機器の開発・設計や部品加工・組み立てなどを手掛けるフジセン技工株式会社(本社・栃木県足利市、木下不二夫社長)は、かねてより課題だった半導体試験装置内のネジ締め工程の人手不足解消と作業品質の安定を目的に、川崎重工業のロボット「duAro(デュアロ)」を導入しました。通常、ロボットによる自動化システムを導入する場合はSIerがシステムアップを行いますが、フジセン技工では自社で周辺機器の製作を含めたシステムアップを実施。その経験に基づいて、ロボットによるネジ締め自動化システムの外販も目指しています。

導入背景/課題:
作業員採用の難しさや高い作業品質の維持をロボットの導入で解決

藤江線技工の工場の入り口の写真
FUJISENの文字が壁に書いてある

フジセン技工は金属加工会社として1987年に設立されました。その後、産業機器の設計・開発、部品調達、組み立てなど製造技術を軸としたトータルエンジニアリングを開始しました。現在は板金工場や各種素材に対応する切削工場を備えており、社員数は約120人です。

フジセン技工がロボットによる自動化を決断したきっかけには、人手不足という問題があります。半導体試験装置の組み立てを担当する作業員がなかなか集まらず採用が難しい状況の中、ロボットでの作業の自動化を決断しました。同社営業本部の佐藤幾代本部長は次のように話します。「半導体産業は需要変動の波が非常に大きく、需要の増減により必要な人員にも波があるため、必要な作業員を雇用し続けるのが難しいのです。人材派遣で必要なタイミングで人を確保しようとしても、弊社が設定しているネジ締め品質を確保できるか試験をしてみると合格率は半分程度です。ネジ締め作業の品質を満たすことのできる作業者を常に確保する方法を検討した結果、ロボットが最適と考えました」

ネジ締めはシンプルな作業のように見えますが、同社技術部の阿久津圭司部長は「ネジ締めの精度が低く緩みがあると、装置の破損が原因で工場の操業停止などを引き起こしかねない。ネジ締めはとても重要な作業」と強調します。

duAro導入の狙いを話す佐藤幾代本部長の写真
▲duAro導入の狙いを話す佐藤幾代本部長

納品先のネジ締めに対する判定が厳しく、高精度で安定した品質が求められる反面、単純作業をひたすらやらせるのでは作業員を募ってもなかなか集まらず、一定の水準を満たすまで作業員が働き続けてくれることも難しいといいます。技術部生産技術課の坂村秀樹技師長は「たかがネジ締めとはいえ、手作業の品質をどう管理するかが問題だった。作業員を採用できない中、品質が安定するロボットが必要だと思った」と話しました。

導入効果/ソリューション:
duAro導入の決め手は、双腕で人と同じ作業ができること

稼働中のduAroと阿久津圭司部長(左)、坂村秀樹技師長のスリーショット
▲稼働中のduAroと阿久津圭司部長(左)、坂村秀樹技師長

duAroは、水平垂直に移動するスカラ型アームを2本備えた人共存型ロボットです。小型、移動可能、安全などの特長を持ち、2015年6月に発売されました。安全面から人間とロボットを隔離しなければならない従来の産業用ロボットとは違い、人と同じ空間で作業が可能です。プログラミングは市販のタブレットを使ってスマホアプリに近い感覚で行うことができます。

数あるロボットの中からduAroを選んだ理由を阿久津部長は「いろいろなメーカーのロボットを見た中で、双腕で人と同じような作業をできることが決め手になった。人が両手を使う工程に導入するには、人に近い動きが可能になる双腕ロボットしか考えられなかった」と説明しました。

半導体試験装置組配工場でduAroは、一方のアーム(腕)が「LMガイド」と呼ぶ板状の部材を運んできて所定の位置にセットし、もう片方のアームがネジをつかんで穴に差し込んで締める作業を行っています。LMガイドは装置の直線運動をガイドするレールです。6本のLMガイドのネジ締めが1つの工程となります。

工場で実際に稼働しているduAroによるネジ締めの写真、ネジ部のアップ写真
▲工場で実際に稼働しているduAroによるネジ締め

阿久津部長によると、duAroによるネジ締め作業の自動化によって精度が高まったことに加え、手作業と比べて1工程の作業時間が半分になりました。LMガイドのネジ締めをロボット化したことで、それまでネジ締め作業を担当していた人材を他の作業に振り分けられ、工場全体でみると、生産工程の効率化及び人員配置の最適化も実現しました。

またロボットが作業を行うことで、どの箇所のネジをどれくらいのトルクで何回転させたかといった、ネジ締めの一連の動作を全て記録することができます。これまでduAroがネジ締め作業を行うようになって不良は一度も発生していませんが、万が一不良が発生した場合はロボットの作業の記録をすべて確認できるトレーサビリティもロボット導入に伴う大きなメリットです。

坂村技師長は「トレーニングセンターが工場の近くにあったこともduAroを選んだ理由の1つ」と付け加えました。川崎重工のロボットのサービスセンターは全国9カ所に設けられており、そのうち「関東サービスセンター」は足利市内にあるのです。

今後の展望や計画:
2台目は各種用途に対応させる計画、経験を生かして外販も

2代目duAroのシステム構成を書いた計画図
▲2台目 duAroの計画図

フジセン技工は、2022年春を目標に2台目のduAro投入を計画しています。2台目は、ネジ締めに特化している1台目とは異なり、段取り替えを可能にして汎用性を持たせ、様々な作業工程を自動化する計画です。「専用機にならないようにして、できる限り作業の効率化を行いたい」と阿久津部長は言います。

アームの先端部に装着するロボットハンドを、プログラムで自動交換できるようにして多品種少量生産に対応させたり、製品ごとに作業テーブルを交換可能にしたりします。さらに、組み立て完了後の検査での画像認識カメラの活用や、チョコ停(引っ掛かりや詰まりなどによる突然の一時的な停止)が発生した際、離れた場所にいる作業者のメッセージウオッチに知らせる機能の追加などを予定しています。

自動化システムの外販は、duAroの自社導入で蓄積したノウハウを生かして展開します。佐藤本部長は「人手不足に悩んでいる中小製造業の困りごとの解決を支援したい」と意義を語ります。duAroは、段ボールに製品を入れる、部品を取り付ける、といったさまざまな繰り返し作業が代替できます。阿久津部長は「圧着、こん包、組み立てなど、特定の工程を自動化するロボットシステムとして販売したい」と話しました。

「例えば、人を雇用して工場の24時間稼働を考えると、1人8時間の勤務とした場合でも、最低3人の雇用が必要となります。duAroは、さほど高額ではなく24時間稼働を考えれば、コスト回収にそれほど長い期間はかからない」と阿久津部長。自社内に設計部門を有するフジセン技工は、ロボット自動化システムを構築する際に必要な付帯設備を企画・製造することができます。duAroをベースにしたロボットシステムの外販を2022年内にも始める方針です。阿久津部長は「外販する自動化システムに使用するロボットはduAroしか考えていない」と、duAroを高く評価しています。

ー 導入企業情報

会社名
 フジセン技工株式会社
代表者
 代表取締役 木下不二夫
設立
 1987年7月
資本金
 9000万円
事業内容
 電気機器・半導体製造装置・調整省力化装置・測定機器などの産業機器
 ①開発・設計②精密板金部品③機械部品加工④組み立て・配線
社員数
 120人
事業所
 本社オフィス・足利工場・切削工場=栃木県足利市南大町400-6
 板金工場=群馬県太田市東新町685
 株式会社プロアクティブ(製造)=栃木県足利市南大町400-6
 株式会社プロアクティブ(人材派遣業)=栃木県足利市田中町905-17
ウェブサイト
 http://www.fujisen.co.jp/

ー 導入ロボット

モデル名
 duAro1=「人共存型」をコンセプトにした双腕スカラロボットの第1号
特長
 省スペース、簡単教示、簡単設置、高い安全性
可搬重量
 各アーム2kg(両アームで4kg)
軸数
 各アーム4軸
繰り返し精度
 ±0.05mm